誕生から55年! ナスの代名詞となったタキイ交配「千両」「千両二号」(タキイ種苗株式会社)

  • 2020/07/02

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目次
「千両」「千両二号」について
第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 8年にわたる苦心の親作り
第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 画期的だった「千両」ナスの特性
第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 好みにぴったり、色、形
第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 果皮特にやわらかく漬け上がりが美しい
第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 極早生で収量が多い
第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 皆が好む形質で一気に市場に浸透した「千両」
第2章 「千両二号」の登場で 時代を超えるロングセラーに − 目指したのは八頭身美人ナス
第2章 「千両二号」の登場で 時代を超えるロングセラーに − 消費者・市場・産地に愛されるロングセラー品種に
第3章 国内初のトゲなし品種 「とげなし千両二号」を開発! − 時代のニーズに合わせた品種を求めて
第3章 国内初のトゲなし品種 「とげなし千両二号」を開発! − 進化は止まらない

「千両」「千両二号」について

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古くから栽培されているナスは、地方種が多く、多彩な果形や肉質があり、各地方に定着しています。しかし、品質や収量性、栽培性、耐病性は高くなく、一般市場に向くものはそう多くありませんでした。1960年代の高度経済成長期に入ると、ほかの野菜と同様、ナスにおいても「よい品物を大量に」という需要が高まりました。そのような中、1961年(昭和36年)に「千両」が1964年(昭和39年)には「千両二号」が開発され、またたくまに長卵形をした千両タイプのナスが、=(イコール)日本のナスの代名詞となりました。

「千両」1964年、「千両二号」は1969年に農林大臣賞、さらに「千両二号」は1980年に農林水産大臣賞も受賞するなど計3回の栄誉に輝いており、現在も全国の産地で栽培され、家庭菜園でも愛されています。

一昨年2016年で「千両」は発売より55周年の佳節を迎えました。脅威のロングセラー品種「千両」「千両二号」の誕生秘話をプレイバックします。

第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 8年にわたる苦心の親作り

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1950年代当時ナスの品種は各地の在来品種も含めると非常に数多く、なお毎年続々と新品種が発表されていました。例えば、「長岡長(ながおかなが)」(1951年)、「早生中長(わせちゅうなが)」(1952年)、「早生大丸」(同年)、「橘真(きっしん)」(1952年)、「早生新交(わせしんこう)」(1957年)、「新橘真(しんきっしん)」(1958年)など多数あります。しかし、親品種には限りがあり、それらを使った組み合わせはすでに検討しつくされ、毎年発表されるいわゆる「新品種」は、あまり変わりばえのしないものが多いという状況でした。

「従来の親品種を使っている限り、今後もずば抜けてよい品種は期待できない」と、タキイでは、本当の意味の新しい交配種を育成するためには、これまでにない「新しい親品種」の育成が必要との方針から、「千両」発表遡ること8年前の1952年(昭和27年)から新しい親づくりに着手していました。まず、それぞれにすぐれた特性をもつ数品種を交配し、その次代、さらにその後代とこれまでにないすぐれた多くの特性をもつ品種を目標に、数多くの個体の中から選抜を続け、ようやくその目標の型にそろうようになり、中長から短卵までのいろいろの形についてそれぞれ数系統が完全に固定、親品種の育成を完了させました。

一方、これらの新しい親を使ったF1検定も毎年数多く行い、有望なF1種との組み合わせについて検討の結果、その中の一つが1961年(昭和36年)に長岡交配「千両」と命名され発表されました。後に新しい親を使ったF1品種が次々と発売されていくことになるのですが、「千両」はそんなタキイの新たな親品種を使ったF1ナスの第一号となったのです。

第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 画期的だった「千両」ナスの特性

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当時、長岡交配として発売された「千両」は枝の節間が短めで徒長しにくく、低温肥大性にすぐれ、ハウス栽培に適する品種でした。やわらかな肉質と整った果形で、果色は濃色でつやがよく、早生で安定した収量性をもっていました。これらの特長は、当時の日本の食生活にぴったりとマッチしました。

以下に詳しく紹介します。

第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 好みにぴったり、色、形

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ナスの形は地方やその市場によって好みが異なりますが、一般に長卵形から中長に近い形が最も好まれ、「千両」はまさにその好みにぴったりあてはまる果形をもっていました。当時としてはかなり長い長卵形で、従来品種である長岡交配「早生新交」や「群交二号(ぐんこうにごう)」よりわずかに長く、しかも胴太りや胴細りせず非常によく整い、その上ヘタの大きさも中くらいで、かぶり具合も美しく、花痕は極めて小さいといった抜群の果形の美しさをもっていました。最盛期はもちろん、初期や中期以降、幾分果の短くなりやすい時期にも果形の見劣りがせず商品価値が下がらないことも高く評価されました。

さらに大きな特長は、果色がずば抜けてすぐれている点です。「千両」は今までにない果色で濃すぎるくらいの果色と光沢を持っていました。しかも、被覆下の光線の少ない栽培や夏ボケのころにもほとんど変わりません。「果の色沢の点でも現在の品種中で右に出るものはない」と言われたほどです。

第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 果皮特にやわらかく漬け上がりが美しい

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当時、野菜も物量から品質の高さが求められ始めたころで、特に栄養価の乏しいナスの場合はむしろ嗜好品に近いところから、品質の良否が市場値を大きく左右し、値開きが大きいものでした。

品質を左右するのは色沢と果形で、さらに果皮のかたさと肉質になります。「千両」は、果皮が特にやわらかいといわれた「早生新交」に匹敵するくらい、あるいはそれ以上にやわらかく、そのうえ漬けた時には、肉の内部まで美しく着色し、漬物用として正に満点の品質でした。なお、果皮がやわらかいと荷傷みや日もちが心配ですが、それも他品種と比べてほとんど変わらないという利点をもっていました。

第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 極早生で収量が多い

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早晩性と収量を見ると、早さでは極早生のグループに属し多収です。開花始めは早い方ではありませんが、石ナスが少なく肥大が早いので収穫始めと初期収量は早く、多くなります。開発に当たっては、当時の農場長にして、国内民間企業では初となるトマトのF1品種「福寿一号」「福寿二号」を世に生み出した故伊藤庄次郎氏の助言を受け、超密植栽培をして早生の株の選抜に集中したことが功を奏し、早生系統を選抜することができました。

無加温ハウスやトンネルなどの極早出し栽培をねらって開発された「千両」ですが、夏ボケ果が少なく、後期の収量も多い点から、小型トンネル以後秋まで収穫しつづける場合でも十分良品多収できる適応性の広い品種として産地に広まっていったのです(第1図)。

第1章 生産者、流通、消費者から 絶大なる支持を得た「千両」の誕生! − 皆が好む形質で一気に市場に浸透した「千両」

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理想的な形質をもつ「千両」が当時の市場や産地にて、どう評価されていたか見ていきましょう。


『収穫の増えてきた7月3日売りより大阪市場に出荷したが、非常に好評で新聞卸売相場より常に高値で取引されている。これは「千両」の特性によるところが大きいと感じている』

『一方、相場の変動が激しい地方市場でも評価は高い。生産者からは「八百屋からの品種に対する苦情はなく、皮のやわらかい茄として高値で取引されている」との声が聞かれ両市場で好評である』

京都府向日町農業改良普及員 田所将良さん 『園芸新知識』1961年11月号より抜粋


『本年は高温乾燥でしたが最盛期の過ぎた9月8日現在でも、「千両」は元気で夏ボケもなく美しい茄が生産されています。他品種に比べて価格が倍ほど高く取引され、いかに優良な品種であるかがうかがい知れます。市場での「千両」の名声は高まりつつあり、人気は最高です』

京都府綴喜郡八幡町 北村才一郎さん『園芸新知識』1961年11月号より抜粋


『市場好みの果実の姿(長卵形)をし、味、色、つや、鮮度の点で特に勝れており、仲買人への割り当てに困るといわれる位に人気を得ており、出荷数量の少ないのが惜しまれた。漬物用としては、これに盾つくものがないということである。また、屑が少なく品質がよいので選別も楽である』

京都府下長岡町 藤井俊一さん 『園芸新知識』1962年2月号より抜粋


等々、市場では取り合いになるほどの人気を博し、生産者からは栽培性の点でも高く評価されたことがうかがえます。

発売から4年後の1968年の『園芸新知識』を紐解くと、東京市場でも関東の主な産地である埼玉県の南埼玉地区(越ケ谷、吉川など)で生産の80~90%、早期栽培の北埼玉地区では20~30%を「千両」が占めるようになったという記述があります(第2~3図)。


『東京市場におけるナスの果形は中長で光沢のあるものが求められ、あまり大型のものは好まれない。その点多収性で比較的早期に出荷でき、収穫後期でも果形の崩れない千両に生産者の人気が集中するのは当然のことと思われる』

京都府下長岡町 藤井俊一さん 『園芸新知識』1962年2月号より抜粋


また、北山氏は今後の展望について『生産地における人気も、市場価格も非常に高い千両茄は、需要の増加に呼応して、今後ともより一層の増加をみることであろう』と結ばれており、「千両」がまさしく破竹の勢いで市場に広まっていったさまが容易に想像できます。

「千両」は市場で取り合いになるほどの人気を博し、産地でも栽培性を高く評価され、瞬く間に各地に広まりました。

第2章 「千両二号」の登場で 時代を超えるロングセラーに − 目指したのは八頭身美人ナス

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こうして形質のよさと栽培性の高さから、関西近郊の市場を中心に高い評価を受け全国の産地へと広がった「千両」。発売以来、関西および中京市場では、少なくとも全入荷量の8割を占め、関東にもその多収性と良質性が認められて、集団産地が増加しつつありました。

しかし「千両」といえども万能なわけではありませんでした。特にスタミナ不足からくる収穫中期に入っての成り休みが問題であり、タキイではこの点を特に留意し、夏季に成り休みしない「千両」よりも強い草勢をもつ品種を目指して改良を進めました。これが1964年(昭和39年)に発売された「千両二号」です。

「千両二号」の育成にあたって、特に考慮した点は八頭身美人のナスを作り上げることでした。つまり、栽培面からは早生・多収・耐病性(特に萎凋(いちょう)病)・高温・乾燥などに強いこと(夏ボケと成り休みの少ないこと)を目標としました。流通と消費面からは首がつまった長卵形(荷詰めが楽で荷傷みが少ない)、ヘタ被りが深く美しいこと、皮がやわらかくツヤに富み、黒紫色で、夏季にも色あせと電球ナス(電球のように、首が細く尻だけが太い果実)になりにくいこと、などが育成の狙いでした(第4図)

これらの目標はほぼ完全に満たされ、市場に現れた荷姿は抜群の美しさを誇り、人気は年とともに高まりました。ナスの出荷規格は4~5段階に分けられますが、収穫を毎日する場合の上物収穫率はきわめて高く、楽々と90%を超える成果をあげ、産地からは、栽培性について高い評価を受けています。


『(千両二号は)果形は長卵形で首細とならないため、市場の人気も非常によい。初期収量はもちろん、盛夏の八月でも休むことを知らずになりつづける。付近の圃場の他品種に比較しても段ちがいの成績を示している。本年は苦土欠乏症が多かったが、この「千両二号」だけは強い草勢からか、わずかに認められる程度であった』

茨城県堺地区農業普及所 技師 張替誠一郎さん 『園芸新知識』1964年10月号より抜粋


「千両」よりも草勢が強くてスタミナにすぐれた「千両二号」の登場により、小型トンネルに始まる長期栽培は「千両二号」、ハウスや大型トンネル向き促成栽培としては「千両」と栽培上の使い分けが可能となり、それぞれの特徴を生かしながら、長卵形を好む地帯に普及し、関西・中部・関東・北陸・東北・北海道の産地において中心を占めるようになりました。

第2章 「千両二号」の登場で 時代を超えるロングセラーに − 消費者・市場・産地に愛されるロングセラー品種に

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こうして生み出された「千両」シリーズは、生産者からは「秀品率が高くてたくさんとれる」、流通からは「商品性が高くてよく売れる」、消費者からは「調理幅が広く、何にでも使えておいしい」と、50年以上経た今でも生産、流通、消費の場から大きな支持を得ています。


『京田辺市でのナス栽培は、昭和34年より開始。昭和44年より品種を現在の「千両二号」に統一しました。「千両二号」は当時も今もF1として画期的な高品質を有しており、果皮はやわらかくて市場性にすぐれていること、また、果色は濃黒紫色でツヤが特によく、果そろいもよいということで選ばれ、現在に至っています』

京都府 JAやましろ田辺総合支店 西村和男さん 『園芸新知識 野菜号』1999年1月号 「千両二号ナス発売35周年特集記事」より抜粋


『甲府盆地でのナス栽培の歴史はふるく、一説には大正初期からともいわれている。品種は、秀品率が高いと評判の「千両二号」を発表当初より導入し、比較試験を行った結果、生育旺盛で果実の色つや、形状、果ぞろいともによく品質良好で、しかも土壌病害にも比較的強く、高い生産性を維持できると好評価を得た』

JA甲府市経済部営農生活課 課長 長沼和之さん 『園芸新知識 野菜号』1999年1月号 「千両二号ナス発売35周年特集記事」より抜粋


このように発売当初より「千両二号」を使い続けておられる産地も多数あり、今でも夏秋ナスの市場に流通する主力品種として活躍しています。

第3章 国内初のトゲなし品種 「とげなし千両二号」を開発! − 時代のニーズに合わせた品種を求めて

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「千両」ナスの普及により、早出しから周年出荷へと作型が広がるとともに、さらなる大幅な増産が求められるようになりました。しかし、1990年代になると、後継者不足や産地の高齢化による労働力不足が問題となりはじめ、作業効率のよい品種が求められるようになりました。

そこで、1994年(平成6年)から育種を始めたのがトゲのない品種です。ナスのトゲは輸送中のスレで果皮を傷つけ、商品価値を落とし、刺さると先端が折れて皮膚の中に残り、痛みはいつまでも続きます。ナスの生産や流通に携わる人々のトゲの問題を解決できたら、作業性の効率につながると考えました。

そうして、2007年(平成19年)に発売を開始したのが「とげなし千両二号」です。千両ナスの長所をそのまま受け継ぎ、ヘタや茎葉のトゲをなくした革新的な品種で、これらは国内で育成された最初のトゲなし品種となりました。

トゲがないことで、収穫や袋詰めの作業効率が上がり、輸送時の傷果を減少することができます。生産者をはじめ、加工、流通関係者、菜園用途でも高い評価を得て、タキイのトゲなし品種は普及しつつあります。

「千両」の発売より55年、以来、早生の「千両」はハウスに、品質と収量が一層すぐれた「千両二号」はトンネル、夏秋用として使い分けられ、日本のナスを代表する主力品種としてロングセラーを続けています。

変わらぬおいしさと品質で、日本の食卓を彩る紫紺のナス。「千両」「千両二号」はこれからも日本のナスの代名詞として活躍します。

第3章 国内初のトゲなし品種 「とげなし千両二号」を開発! − 進化は止まらない

2017年に発売された単為結果でトゲなしの長ナス「PC筑陽(ぴーしーちくよう)」は、タキイ初の単為結果性ナスでした。ホルモン処理不要の省力性は産地からも喜びの声が届いています。「筑陽」タイプに続く「千両」タイプの単為結果性ナスの育成も進んでおり、その登場も遠くないでしょう。
  • 2020/07/02

  • タネニュースナス

この記事を書いた人

タキイ種苗

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