作りやすくおいしい 黄芯品種の礎! 「黄ごころ」シリーズとタキイの黄芯系ハクサイ(タキイ種苗株式会社)

  • 2020/07/03

  • タネニュースはくさい

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目次
「黄ごころ」の魅力とは
第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 日本人の食生活に欠かせない野菜としてハクサイの栽培が増加
第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 緑黄色野菜ブームから一躍脚光を浴びた黄芯系ハクサイ
第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 主要産地での試作を重ね病害や生理障害に強い黄芯系ハクサイを開発
第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 栽培のしやすさとおいしさを兼ね備えた黄芯系ハクサイ「黄ごころ」
第2章 早生~中晩生の「黄ごころ」の誕生により全国各地で黄芯系の栽培が可能に − 1998年に秋冬どりの「黄ごころ65」「黄ごころ75」「黄ごころ80」、2001年には中晩生の「黄ごころ90」が登場
第3章 さらに進化した「黄ごころ」シリーズ 根こぶ病に強い「きらぼし」とべと病耐病性の「晴黄」シリーズが進化 − 根こぶ病激発圃場でも安心して使える「きらぼし」シリーズ
第3章 さらに進化した「黄ごころ」シリーズ 根こぶ病に強い「きらぼし」とべと病耐病性の「晴黄」シリーズが進化 − べと病に強い「晴黄」シリーズ
第4章 消費者のニーズに合わせて更なる品種改良を − 食べきりサイズのミニハクサイ「CRお黄にいり」
第4章 消費者のニーズに合わせて更なる品種改良を − 時代を先取り! 高機能性とおいしさを両立した「オレンジクイン」
第4章 消費者のニーズに合わせて更なる品種改良を − 国内農業の未来を見すえて育成を

「黄ごころ」の魅力とは

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鍋料理・漬物の材料として日本人の食生活に欠かせないハクサイ。意外にも日本での栽培の歴史は浅く、日清戦争のときに兵士が種子を戦地から持ち帰ったとされ、食卓に上るようになったのは明治時代以降です。

現在スーパーなどで主に売られているのは切った時にカット面(球内色)が黄色い「黄芯系」といわれる種類です。それまでの「白菜」は名前のとおり球内の色が白かったのですが、1980年代の緑黄色野菜ブームとともに内部が黄色の品種が注目され、栄養価の高さとカット面の見ばえのよさから、人気を博し市場の主流となっていきました。

しかし、80年代当時、黄芯系品種は、生理障害が出やすく栽培しにくい品種でもありました。そんな中、1996年に誕生した品種が、黄芯系で品質と栽培安定性を両立した「F1黄ごころ」(現・黄ごころ85)です。

今回は産地はもとより家庭菜園でも作りやすい「黄ごころ」シリーズにクローズアップし、時代のニーズに応えて変遷してきたタキイ黄芯系ハクサイ育種の歴史を紐解きます。

第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 日本人の食生活に欠かせない野菜としてハクサイの栽培が増加

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日本でのハクサイ栽培の歴史の始まりは明治時代以降。短期間に大きな収量を得ることができ、米食との相性のよさから、その後栽培・消費は急激に増加、1968年には全国で5万800haの栽培面積と186万7000tの生産量で、史上最高の数値となりました。

タキイでは1950年に自家不和合性による世界発のF1品種「長岡交配一号」を生み出しています。その後、他社でもF1化が進み、味のよさを追求して多種多様な品種が生み出されていきます。そのなかで、黄芯系ハクサイ自体は、1960年代に品種としては育成されていましたが、当時のハクサイはカットせず一家に1玉での販売が普通だったので、味はよくても差別化できず、市場には出回っていませんでした。当時の主流は球内色の白いハクサイだったのです。

第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 緑黄色野菜ブームから一躍脚光を浴びた黄芯系ハクサイ

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ところが、1980年代後半に起こった緑黄色野菜ブームの影響で、黄芯系ハクサイが一躍注目を集めるようになります。さらに、生活様式や食生活の欧米化によりハクサイの栽培・消費に減少がみられ、これまで1玉だったのが1/2、1/4などのカット販売が普通となり、売り場で見ばえする黄芯系品種がますます好まれるようになります。一方、食卓では漬物の主流が糠漬(ぬかづけ)から浅漬となり、食味のよいことと見た目がよい黄芯であることの両方が求められるようになっていきました。その販売価格は、従来品種に比べて1ケース当たり300円の差がついたこともありました。

第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 主要産地での試作を重ね病害や生理障害に強い黄芯系ハクサイを開発

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しかし、当時の黄芯系品種は、根こぶ病、軟腐病などへの耐病性や、芯腐れ、縁腐れ、ゴマ症などに対する耐生理障害の特性が不足していました。特に12月から厳寒期にかけての作型は、作付面積も多いため、産地からはより作りやすく、良品が安定生産できる品種の育成が強く望まれてきました。

このような要望に応えるべくタキイでは、生理障害の発生が少なく、年内~冬どりまで幅広い適応性をもった中生の黄芯系品種F1「黄ごころ」の育成を進めていきます。開発にあたっては、自社農場だけでなく、「T-666」の試行番号で岡山県や愛知県、和歌山県などの主要産地で試作試験を行い、芯腐れ症発生の少ない系統を選抜し育成を進めていきました。

ある産地では、「T-666」を初めて試作した際、ハクサイの担当ブリーダーが直接圃場へ赴き、球内部の芯腐れ症(アンコ)を、チェックするためハクサイを切って廻るなど、現地に度々訪れて開発に取り組んだというエピソードも残っています。

第1章 高品質と栽培性を兼ね備えた 黄芯系ハクサイ「黄ごころ」の誕生 − 栽培のしやすさとおいしさを兼ね備えた黄芯系ハクサイ「黄ごころ」

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「黄ごころ」は中間地の年内どり、暖地の冬どり栽培に力を発揮する品種として開発されました。つまり12月~1月の厳寒期に収穫するハクサイです。その特長を以下にご紹介します。


①生理障害に強く栽培しやすい秋冬どり(中生)種

秋冬どりに用いられる中生品種は、生育期間が長く、気候の変化に大きく影響されるため、石灰欠乏症やゴマ症などの生理障害がもっとも発生しやすくなります。一般にこれまでの黄芯系品種は、生理障害に弱かったのですが、「黄ごころ」は生理障害の発生が少ないうえ、草勢旺盛で根こぶ病などの病害にも強く栽培しやすいことが特長です。


②寒さの中でもよく肥大し、播種期の幅が広い

低温期でもよく肥大し耐寒性にもすぐれるため、一般平暖地の8月下旬~9月中旬まき→年内~冬どり栽培までと幅広い適応性をもっています。直売所出荷や家庭菜園でも使いやすい理由です。 


③作業がやりやすい省力品種で収量も上がる

「黄ごころ」は外葉が丈夫で草姿が立性なので、追肥・薬散・結束などの管理作業が容易です。また、球姿は尻張り・胴張りのよい濃緑の円筒形で、球の形状、球そろいが抜群によく、秀品率が高いという特長をもちます。


④球内鮮黄色で、品質が極めて良好

ハクサイをカットしたときの球断面の、黄・緑・白色の色調バランスがよく、特に結球内部は鮮やかな黄色みの黄芯ハクサイです。しかも、葉がやわらかで歯切れがよく、甘みもあり、漬物用として味がよいので市場でも高い評価を受けました。この品質の高さが「黄ごころ」シリーズヒットの理由です。


当時の産地の声をご紹介します。


生産農家からは「黄ごころは、アンコ(芯腐れ症)になりにくく、作りやすい。非常に玉ぞろいがよく、尻も柔らかいので収穫時にカマが入れやすいと栽培性・作業性ともに高評価。品質においても、非常にボリューム感があり、球内色も非常に鮮やかな黄芯で、黄・緑・白色のバランスもよく葉が柔らかく食味もよい」との声です』市場からは『漬物屋さんの反応を聞くため、「浅漬研究会」にサンプルを送付。評価は「非常にやわらかいし、黄色も鮮やかだ」とよい結果でした。市場への試験出荷でもボリュームがあり、品質はよいと評判上々でした』

(JAわかやま 営農指導部 吉村浩典さん『園芸新知識・野菜号』1996年6月号より)


『大阪市場を中心に販売した結果、ほかの黄芯ハクサイより200円、一般ハクサイより400円高い値で常時販売できました。カット面のすばらしさ「緑と白と黄のバランスのよさ」と漬物にした場合の漬けやすさ、漬け上がりのよさが高い評価を受け、一度出荷した市場からはすべて連日出荷の要請がありました』 (岡山県JA牛窓町 出射 茂さん『園芸新知識・野菜号』1996年6月号より)


生理障害の発生が少なく栽培容易で、低温肥大性にすぐれ、色鮮やかで品質は極めて良好。播種期の幅も広い中生種で、作業性と収量性を兼ね備えた省力品種となり、特にこれまで、生理障害、中でも芯腐れ症(アンコ)に悩まされてきた西日本の産地で導入されました。

産地では“救世主“のように受け入れられ、「黄ごころでアンコ(芯腐れ症)が出るような畑ではハクサイは作れない」とまで言われたほどでした。

第2章 早生~中晩生の「黄ごころ」の誕生により全国各地で黄芯系の栽培が可能に − 1998年に秋冬どりの「黄ごころ65」「黄ごころ75」「黄ごころ80」、2001年には中晩生の「黄ごころ90」が登場

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「黄ごころ」の登場により、中間地の年内どり、暖地の冬どり栽培を行う西日本の産地を中心に黄芯系の高品質安定生産が実現しました。

タキイではその2年後の1998年には秋冬どりの黄ごころシリーズとして「黄ごころ65」「黄ごころ75」「黄ごころ80」を発表(これまでの「黄ごころ」は「黄ごころ85」に改称)。さらにその2年後の2001年には「黄ごころ85」の後に出荷できる冬どりの中晩生種として「黄ごころ90」を発表しました。

これにより全国の産地へ「黄ごころ」シリーズが普及していきました。


●「黄ごころ65」

生理障害の発生が少なく品質良好な黄芯早生種

早生ハクサイの栽培では、病気や生理障害が発生しやすく、栽培が安定しにくいものです。「黄ごころ65」は根こぶ病、ウイルス病、軟腐病などに強く、石灰欠乏症やゴマ症などの生理障害の発生も少ないうえ、草勢旺盛で栽培しやすく、播種後65~67日ぐらいから収穫できる早生種です。


●「黄ごころ75」

生理障害の発生が少なく在圃性にすぐれた年内どり黄芯中早生種

生理障害の発生が少なくて栽培しやすく、播種後75日ぐらいで収穫できる年内どりの黄芯系中早生種です。過熱になりにくく球内色の黄色味の退色も少ないうえ、外葉が丈夫で耐寒性も強いため、畑に長く置いておけるので、その分収穫期間も長くなります。


●「黄ごころ80」

生理障害の発生が少なく肥大性のよい黄芯中早生種

冬どりハクサイは育苗時ではまだまだ暑く、収穫時期はかなり寒くなるなど、生育期間が長く、気象条件は大きく変化します。「黄ごころ80」は根こぶ病、軟腐病、ウイルス病などに強く、草勢旺盛で栽培が容易。しかも、石灰欠乏症などの生理障害の発生が極めて少ないのが特長です。特に、肥沃な火山灰土壌地帯である関東地方の年内~冬どりに適した中生種です。


●「黄ごころ90」

生理障害の発生が少ない耐寒・晩抽性の冬どり中晩生種

播種後90日で、2.5kg程度に太り、「黄ごころ80」「黄ごころ85」に続いて収穫期を迎える、冬どり中晩生種。球色は濃緑で、寒さによる玉の傷みや色あせも少ないうえ、球内色も、「黄ごころ」の中で最も黄色みが強く、玉の外観・球内色が美しいため、市場評価は上々です。


品質や収量性を高めながら、黄芯系の弱点とされた耐病性・耐生理障害を重点に育成された「黄ごころ」シリーズ。一般地の秋の早どりから暖地の早春どりまで幅広く栽培され、関東をはじめとする全国の産地へと広がっていきました。

第3章 さらに進化した「黄ごころ」シリーズ 根こぶ病に強い「きらぼし」とべと病耐病性の「晴黄」シリーズが進化 − 根こぶ病激発圃場でも安心して使える「きらぼし」シリーズ

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「黄ごころ」シリーズは品種特性として根こぶ病耐病性を持っていますが、ハクサイの生産地では、これら耐病性品種をも侵す病原性の強い根こぶ病が見られるようになりました。

このような根こぶ病激発圃場においても、安心して作付けのできる品種を目標に育成されたのが、2002年に発表された年内どり中早生種の「きらぼし」(現「きらぼし77」)です。その後、2005年に冬どり中生種の「きらぼし85」、2010年には「きらぼし65」「きらぼし80」「きらぼし90」を発表。根こぶ病によって品種選びに苦慮していた産地の救世主として、高い評価を得ました。 

第3章 さらに進化した「黄ごころ」シリーズ 根こぶ病に強い「きらぼし」とべと病耐病性の「晴黄」シリーズが進化 − べと病に強い「晴黄」シリーズ

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次に高温期においても作柄の安定を図ることができる品種を目標に、耐病性については、特に発生が多く見られるべと病に注目し育成を始めます。

昔から、ハクサイの葉に発病するべと病(葉べと)はもちろん、90年代中ごろから高冷地を中心に広がった葉柄部(葉肋部)に発生する肋べと(茎べと)に対しても高い耐病性をもつ品種として2005年に発表されたのが「晴黄60」です。これは極早生の品種でしたが、その後2007年に「晴黄85」「晴黄90」が発表されたことで極早生から中晩生までの「晴黄」シリーズが完成。全国の産地で主力品種として取り入れられています。

第4章 消費者のニーズに合わせて更なる品種改良を − 食べきりサイズのミニハクサイ「CRお黄にいり」

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一方、消費の現場に目を向けると、ハクサイの消費減少の流れは止まることなく、2007年には栽培面積1万8700ha、生産量91万8800tと1968年の半分以下の数字となってしまいました。2000年の調査では一世帯当たりの家族数は2.7人となり核家族化も進み、ハクサイなどの重量野菜はカット販売が一般的になってきます。


カット販売は衛生面や日持ちの点からも問題があり、普通ハクサイを密植して小玉で収穫するミニハクサイも市場に出回っていたのですが、望まれる収穫サイズや早生性、耐病性が不足しており、定着に至っていませんでした。


そんな中タキイでは「普通ハクサイの小型化ではなく純粋なミニハクサイを育成する」というコンセプトで、

①サイズを普通ハクサイの1/4カット並み(600~700g)にすること

②外葉を立性・コンパクトにして密植適性を高めること

③熟期を50日とすること

④風通しが悪いと発生するべと病に耐病性であること

を目標に育成をスタートしました。 その結果2005年に生まれた「お黄にいり」は、高齢化が進む農家にとっては重い箱を持たなくて済む利便性を高いものに仕上がりました。生育が早いため、農薬の散布回数を大幅に減らすことができ、安心・安全といった観点からもすぐれています。カット販売されているものよりも新鮮であり、使い勝手がよいことも特長です。サイズが小さいのでスペースの小さい家庭菜園でも栽培でき、またサクサクした、やわらかくて歯切れのよい食感はサラダでおいしいと期待通りの評価を得ることができました。

第4章 消費者のニーズに合わせて更なる品種改良を − 時代を先取り! 高機能性とおいしさを両立した「オレンジクイン」

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さて、「黄ごころ」登場前に先進的すぎて、今、再ブレイクをしたハクサイがあります。

黄芯系ハクサイが市場に出回り始めた当初、「黄ごころ」シリーズに先駆けて1986年に発売された、球内色が鮮やかな橙黄色の画期的なハクサイ「オレンジクイン」です。


タキイでは黄芯系ハクサイの人気の高まりを受けて、1979年ごろから、球内部の黄色味が強く、しかもフレッシュサラダにも合う歯切れのよさとうまみをもち、青臭さのない従来とは全く違う新しいハクサイの育成を開始しました。


「オレンジクイン」は、タキイの開発部による中華料理店への売り込みなども手伝って、認知度が高まり、売上を伸ばし、当時、消費が落ち込みつつあったハクサイ消費の回復にも少なからず貢献しました。


近年になって、シス型リコピンを多く含むことが判明し、おいしさプラス機能性の面で脚光を浴び「ファイトリッチ」シリーズの一つとして、再び注目を集めています。

第4章 消費者のニーズに合わせて更なる品種改良を − 国内農業の未来を見すえて育成を

こうして時代の変化を敏感にキャッチし、市場と産地両方のニーズに応えて進化してきたタキイの黄芯系ハクサイ。


現在の国内農業をめぐる状況を見ると、気象変動の問題は避けられません。産地ではゲリラ豪雨やひょう害、干ばつなど局地的で極端な気象が増加していて、これからのハクサイには「耐病性」「生理障害耐性」がさらに重要になると考えられます。また、近年需要の高まっている外食、中食用途である業務加工向けの契約栽培が増加する中、計画出荷に欠かせない在圃性(畑に長くおいておける性質)や加工段階における「加工適性」も重要な特性になりつつあります。


タキイでは、これら市場のニーズに応えるのはもちろんですが、産地で作りやすく、高品質でおいしいハクサイにこだわり、育成を進めて参ります。

この記事を書いた人

タキイ種苗

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